カテゴリ
最新の記事
以前の記事
フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
発売されたばかりの雑誌パイパーズに、ドイツのクラリネット製作家ヨッヘン・セゲルケのインタビュー「クラリネットはどのようにして発明されたのか?」が載っている。クラリネット誕生秘話とでも言うべき内容がとても面白い。
クラリネットは1700年頃に、それこそ忽然とこの世に現われた。発明された正確な年代は分からず、発明者はヨハン・クリストフ・デンナーとされているが、実際は不明である。 コリン・ローソンは次のように書いている。 「ニュルンベルクのドッペルマイルが1730年に記述したように、ヨハン・クリストフ・デンナーがシャリュモーからクラリネットを発明したという証拠はどこにもない。ドッペルマイルは地元の職人の業績を誇張する嫌いがある。しかし彼のこの記述が後に孫引きされていった」 英語で書かれたクラリネット研究書の多くは、このローソンの記述のように、クラリネットの発明者をJ.C.デンナーとすることに非常に慎重なように見える。と言っても、この点については、ただ上記ローソンか誰かの記述を孫引きしたと思われるものも多い。 これに対してセゲルケはインタビューで、懐疑的どころか、最初からJ.C.デンナーがクラリネットの発明者と疑わない態度で話をしている。新しい根拠を示しているわけではないが、デンナーの人となりや、彼の様々なアイデアなどを具体的な例で紹介しており、英語のクラリネット文献では読んだことのないリアルなドラマを描いてみせるのである。 セゲルケの工房はバンベルクにある。デンナーが活躍したニュルンベルクに近い。当然、当時のさまざまな一次資料を手に入れ調査するには、英語圏の研究者たちよりは絶対的に有利な立場にある。なにせ「地元」なのだ。そんなことがこの記事を読むとよく分かる。 ドイツ人は、J.C.デンナーがクラリネットの発明者だと信じている。その証拠に、ドイツ・クラリネット協会は2004年に「クラリネット生誕300年」を祝うイベントを開いた。ローソンなどの研究者たちにすれば、クラリネットの発明年はまだ特定できていないのだから、これは明らかに「勇み足」になるはずだ。またニュルンベルクでは、デンナーとクラリネット誕生の物語をオペラにし、数年前に上演した(セゲルケも出演した)。「おらが町のデンナー」を世界にアピールしようという強い意図を感じる。 私のような(日本語と英語しか読めない)ディレッタントには、今のところ、ドイツ人はいささか牽強付会に見え、英語圏の一部のクラリネット研究者たちは勉強不足に思える(きちんと一次資料に当たれと言いたい)。 その意味で特筆すべきは、平井常哉さんという熱心なクラリネット愛好家(と言うより研究者に近い)がニュルンベルクに足を運び、上記ドッペルマイルの文献を直接その目で確かめ、日本クラリネット協会会報にリポートを載せたことだ。 クラリネット誕生にまつわる唯一の資料とされているこの文献を、こうした生の写真やリポートで拝めたのは、私にとって初めてである。それを日本語で読めたというのは、とっても意義深いことだと思う。 ↑日本クラリネット協会会報(平成16年7月20日No.88)に載った平井常哉氏の「クラリネットの誕生を記録した貴重な歴史的資料とその著者ドッペルマイル」より転載。
by hornpipe
| 2007-12-19 23:05
| クラリネット
|
ファン申請 |
||