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ケルの演奏が音楽の運動法則に従っていると感じる典型的な例は、彼の評価を不動のものにしたブラームスのクインテットに聴くことが出来ます。
上記、冒頭2小節の螺旋状のモチーフが随所に出て来ますが、この16分音符を彼(と共演したブッシュ弦楽4重奏団も)は均等に演奏せず、頭に少し長めのルバートをかけ、加速度をかけて回転させます。 ブラームスはここで、付点4分音符のあとに回転する16分音符6つを書いているという、見た通りの事実にいま一度注目してみましょう。つまりブラームスは、付点4分音符でステイ(留まる)させ、次に16分音符でぐるりんと音楽を回転させているわけです。 それを現代の演奏家たちはどう演奏しているでしょうか? ほとんどの演奏家たちが、若干のニュアンスを込めこそすれ、音符を均等に平板に演奏します。モチーフがそのように書かれていてもいなくても同じ、というような演奏をします。 前項2で挙げたモーツアルトの協奏曲の例も同じです。ケルは上のGから駆け下りる時に、まるで片足で踏み切って飛び降りるかのように一瞬の弾みをつけるのですが(米デッカの録音では普通に演奏している)、これも、2オクターブものジャンプをするためには理解できる動きです。現代の演奏のように、ここをもしサラリと吹いてのけたら、モーツアルトがあえてこんな大跳躍を要求した意味が薄れてしまうでしょう。 ちなみに、ケルと同時代かそれ以前の演奏家たちは、次のような反復するフレーズでは、若干アッチェレランドを行ったりします。(譜例はモーツアルトのクラリネット五重奏曲の第1楽章から。上段クラリネットソロ、下段1stヴァイオリン。ケルはこのフレーズではアッチェレランドをしないが、コンチェルトなどの似たフレーズでアッチェレランドを行うことがある) 我々の耳だと、「あっ!急いでる!」と騒ぎたてたくなる演奏ですが、古典派からロマン派の時代を通じて、こうした「急ぐ」演奏は日常的に行われたと言います。ある人は、「人間の心理から言ってその方が普通(自然)だから」と解釈しています。 (つづきます)
by hornpipe
| 2006-11-20 23:28
| クラリネット
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