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ブラームス時代のピアノとクラリネットを使ったデュオコンサートが昨日、東京文化会館小ホールで行われた。
演奏は、ピアノがモーツアルトの校訂や研究で世界的に有名なロバート・レヴィンと、クラリネットがジュリアード音楽院教授で世界的ソロイストのチャールズ・ナイディック。 1曲目、シューマンの幻想小曲集の第1曲が始まるとすぐに、二人の音楽にもう引きこまれてしまった。 ゆっくりとした出だし、クラリネットの2小節目第2拍の表情記号(<>)の情感あふれる揺らぎ、半音のためらい、アルペッジョでの高ぶり……。 今まで聴いたどの演奏よりも感情の起伏の大きな演奏。それはダイナミックスだけでなく、テンポにも多く現われ、もちろんハーモニーの色合いによって千変万化する。たとえば第2曲、クラリネットが明るく歌い出し(記譜音で、ソ・ファーレシドーラファ)、すぐに短調に転調する(ソーファミ・ミファソーファミ)この乙女心のような繊細な転調部分など。 ブラームスではソナタ第1番の第2楽章が圧巻で、よくもまあ、ここまで二人の心を通わせられるものだ! あのカザルスが「いつの時代の音楽でも、ルバートのない演奏は考えられない」と言っているけれど、そのお手本がそこにあった。 しかもそのルバートは恣意的では決してなく、ブラームスがそのように書いた音のままに動く。 楽譜には見た目の「たたずまい」というものがあると思うのだが、それが立体的に音になって聞こえてくる……なんていう初歩的な話は、もちろん彼らには大変失礼なことで、ハーモニーの色をがらりと変える一音だとか、入れ子細工でつくられたモチーフを浮き立たせたりとか……。 (第2楽章の最後の音からアタッカで第3楽章に入った時の見事な効果!) すごいのは、二人してそれをやっていることで、聴いていると、合う合わないという次元をとうに超え、まるでお互いの即興の領域に入ってしまっている(アンコールでもこの楽章を演奏したが、そこではさらに!) 肝心の楽器のことは、だからどうでもよい気がした。 はっきり言えるのは、ピアノが全くうるさくないこと。ブラームスの分厚い和音が、まるでうるさく響かず、クラリネットの埋もれがちな中低音域もきちんと聞こえて来る。 音色はピアノフォルテとモダンの中間。ペダルの効果は現代のものと全く違って、限定的に聞こえた。それに調律のせいかどうか、不協和音がきちんと不協和音に響く。 クラリネットは、このピアノの音質にある意味よく似ていて、多分にツゲ材の音がする。ピアノからメゾピアノのまろやかな音は譬えようがなく、完全にピアノに融け合う瞬間が数多くあった。 ※10月22日(土)17:00~ 長野県民文化会館中ホールでもコンサートがある。 ただしピアノはモダンのピアノ。4000円。
by hornpipe
| 2011-10-20 22:16
| クラリネット
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