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明け方の妄想のつづき、今度はチャイコフスキーです。
大きく打って出ましたが、「弱い統一理論」程度にしておきましょうか。というのも、スコアを見れば小学生でも一目瞭然ですから。 でも、3つの交響曲にここまで徹底して共通したものが流れているのを見ると、誰もが改めて驚かれると思います。 さらによく見ると(ただ楽譜の模様を眺めるだけですが)、この3つのシンフォニー、すべて出は一つのようなのです。その「出」とは、4番の冒頭です。5番も6番も、いえ、4、5、6番の全楽章(と言い切りましょう)までが4番の冒頭、すなわち冒頭のファンファーレと次の第一主題に発しているようです。もっと暴論を言えば、冒頭のファンファーレの中にその要素がすべて含まれていると言っていいかも知れません。ちょっと見てみましょう。 ↓ 4番冒頭のファンファーレ。3連符の次に来るドレミ♭(記譜音)の上行音形+後半の下降音形に注目。ドレミ♭の上行音形を仮に「運命的動機」としておきます。 ↓ 5番の冒頭のクラリネットのメロディは、上のファンファーレに対応している気がします。(前半の同音の付点音形+二度上昇が運命的動機、後半が下降音形) ↓ じつは6番の冒頭部分もこのパターンを踏襲しています。まずファゴットによるミファソ(記譜音)の上行音形は運命的動機。ファゴットのこのメロディは二度繰り返されたあと、最後にヴィオラが受けて下降音形を奏でます(その下の楽譜。序奏部の終わり部分)。 単純な形の類似からも、この3曲の冒頭部分には共通するものを感じます。 もっと細かく見て行くと、実に3曲の全楽章は上の二度音程から成る上行音形と、同じく二度音程から成る下降音形(仮に「順次進行」と呼びます)のいずれかから派生していることが分かります。 まず4番から。 ↓ 第1楽章第一主題の下降音形。ファンファーレの下降音形とは別に、これが3曲に出てくる下降音形の原型となるものだと思われます。ここでは半音階進行を交えて「無限旋律的」に解決を遅らせることで、より強い不安感や焦燥感を出しています。 ↓ 同・第二主題。これは冒頭ファンファーレをもじったもので、運命的動機です。 ↓ 第2楽章に出てくる二つの主題。以下、第4楽章まですべて上記第一主題の下降音形。 ↓ 第3楽章に出てくる二つの主題。 ↓ 第4楽章に出てくる二つの主題。 次に5番。 ↓ 第1楽章第一主題。ソラシドシラ(記譜音)がファンファーレの運命的動機に対応。 ↓ 同・第二主題。これも運命的動機からなる。 ↓ 第2楽章。下降音形。 ↓ 第2楽章の次の二つのテーマはやや苦しいですが、順次進行の変形で下降音形と見れなくもありません(上のテーマは二つ目の音をドにするとレドシラとつながり、下のテーマは一つ目をオクターブ上げるとミレドシとつながる ← かなり苦しいですが)。 ↓ 第3楽章の二つのテーマ。下降音形。 第4楽章は第1楽章のテーマのバリエーションで出来ていますので割愛します。順次進行のオンパレードです。 次に6番「悲愴」。 ↓ 第1楽章第一主題は冒頭ファゴットの動機の変形なので割愛。下は第二主題、下降音形です。 ↓ 第2楽章の二つのテーマ。冒頭のテーマは第1楽章の第一主題から来ていて運命的動機。中間部のテーマは下降音形。 ↓ 第3楽章のテーマは、冒頭からせわしなく走り回るタランテラと四度音程から成る奇妙なマーチから成り、全曲で絶えず二度音程から成る上行と下降音形が上下します。 ↓ 第4楽章は二つのテーマともに下降音形です。冒頭の激しい悲しみを表すメロディは、第1楽章冒頭のファゴットを受け継いだヴィオラのメロディ(前出の譜例)にすでに現われていると思うのですが。 それにしても第4楽章のこの二つのテーマ、同じ単純な下降音形でありながら、一方でこれほど強い悲哀を表し、もう一方では深い慰めを表す……見事の一言に尽きます! 勉強家の作曲家はモチーフの使い回しが上手なようで、ベートーヴェンやブラームスがその典型ですが、チャイコフスキーも大変な勉強家でした。 チャイコフスキーはメロディ・メーカーとしての側面ばかりが語られ、ブラームスなどとは正反対の作曲家と思われがちですが、そのメロディは実はとてもシンプルなパターンから出来ていて、そのパターンを徹底的に使い回す傾向があることは、以前このブログでも「白鳥の湖」で指摘しましたので、お暇な方はご覧ください。 「白鳥の湖」のモチーフは十字架音型?
by hornpipe
| 2011-01-14 22:47
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