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ブラームスのクラリネット五重奏曲、第1楽章の下の譜例の部分。
大抵は弦楽器がこのデタシェの8分音符を、重々しく踏みしめるように演奏する。しかし、本当にそれが曲に合っているだろうか? あるとき、台所で水を飲んでいてふとこの部分が耳につき、頭の中で何度か歌っているうちに、自分も含めてよくある演奏は「間違っている!」という確信のようなものを抱いた。 このモチーフは、冒頭の回転する16分音符の反行形に近く、音価を倍にしたようにも思える。そのエネルギーのベクトルは垂直方向ではなく、限りなく水平方向にあるのでは? 極端に言うと、オットットット……と転びそうになるのでもいいぐらい。それを一歩一歩踏みしめるように演奏すると、太っちょのオヤジがドタドタと走っているような滑稽さを感じる。 なぜそんな(踏みしめる)演奏になってしまうのか? 第1の理由は、テンポ。きっと、第一楽章で多くの演奏はテンポが遅すぎる(指示はAllegro)。 第2の理由は、この曲(とくに第1楽章)の性格を、激しさよりも渋さ、柔和、叙情的にとらえるのが原因かも知れない。 たまたま今日、車の中で聴いたマーク・ヌッツィオ(NYフィル副首席)の演奏が、まさにそれだった。テンポはかなり遅く、角がなく、この部分のデタシェ記号すらそれほど際立たせない。この演奏は、いわば「西の対極」だろう。 はたして「東の対極」はあるのだろうかと思いつつ、秘かに期待しながらブッシュ弦楽四重奏団とレジナルド・ケルのCDを聴いたら、やった! さすがケルとブッシュ。テンポは猛烈に速く、この部分も前へ前へと進む推進力がものすごい。しかも、その流れで到達する第2主題の美しさ! ※残念ながら、ヌッツィオ氏のブラームスは私の趣味と全く合わなかった。カップリングのモーツアルトの五重奏はとても平均的な解釈だが、第3楽章のテーマを誰よりも明快に2小節にフレージングしているのが耳に残る。クラリネット奏者としては非常に堅実、音も美しく、何より音程が良いのはメジャーオケの貫録。ただし個性的ではない。
by hornpipe
| 2009-10-31 23:36
| クラリネット
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