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ルイス・ロッシのクラリネットを手にしたのは、ちょうど10年前の1月だった。
ボストンのジョナサン・コーラーがロッシを愛用し、「音程も何もかも素晴らしい」とべた褒めしていた言葉が耳に残っていたのと、カタログを取り寄せてみたら、写真に載っていたローズウッドのクラリネットの美しさに一目惚れしてしまい、思い切って楽器を直接発注した。 ロッシはアルゼンチン生まれのクラリネット奏者。 ブエノスアイレスの音楽院を出たあと、フランスでギイ・ドゥプリュに、イギリスでジョン・マッコーに師事し、楽器をいじったり自作したりする人が多いイギリス人たちに触発されて、楽器を作るようになった。 最初は、自分が使うブージー&ホークス1010タイプのイングリッシュボアをローズウッドで作ったが、評判が良かったことから、人のためにも作るようになり、その後フレンチボアも製作。現在はアメリカン・ボアやハイブリッド型なども作っている。 ほどなくして、パメラ・ウェストン女史の『現代のクラリネット・ヴィルトゥオーゾたち』という信頼すべき本にも、「自作の楽器で演奏活動を行うただ一人の世界的名手。その楽器はクラリネットのロールスロイスとも評価されている」と書かれるまでになった。 実際、ロッシはクラリネッティストとしても優れた名手である。 まるでベルカント・テナーのようによく歌い、ほんのりとかかるヴィブラートに独特のペーソスを漂わせる。彼のピアソラは絶品で、他の誰も真似できない。 ロッシの楽器を購入したのは、私がおそらく日本人で二人目だった。 一人目は京都の吉田光志朗さんで、将来を嘱望される人材だったが、惜しくも白血病で1997年に亡くなってしまった。氏はイギリスのジョン・マッコーのもとに留学してロッシの楽器を知ったようだ。 その後、私はロッシ・クラリネットの日本での普及に微力ながら手を貸し、それとは別に、彼との交流でいろいろなことを学ぶことが出来た。 その一番大きな影響は、楽器に対しても、人に対しても視野が広がったこと。 個人工房のクラリネットでも、短期間でこれだけ質の高いものが作れること。 南米にも彼のように素晴らしい名手がいて、また素敵なクラリネット曲もたくさん書かれているということ。 この点で特にご紹介したいのが、アルゼンチンの作曲家、ガスタヴィアーノのクラリネット・ソナタ。ロッシが世界に広めたが、一度聴いたら忘れられない親しみやすさがあり、かつ演奏しがいのある曲だ。 また、先ごろ来日したシモン・ボリバル・ユースオーケストラにはロッシの弟子がたくさんいて、彼らの何人かもロッシを使っている。同じオケのOBたちで作るカラカス・クラリネット四重奏団は、世界最高レベルのクラリネット・カルテットでもある。 ↑2000年に来日したとき、ある楽器店で自分の楽器のデモンストレーションをかねてピアソラを演奏するルイス・ロッシ。
by hornpipe
| 2008-12-24 23:35
| クラリネット
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