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意識して集めたわけでもないのに、勘定してみたらモーツアルトのクラ5のCDが15枚もあった。他にLPが5~6枚あるので、20枚を超える音源が手元にある。
「この一枚一枚の何を聴いたんだろう?」と考えると、全く心許ない。ただ漠然と……としか言いようがないのだが、もちろん、居ながらに比較して聴けるのはスケールメリット(?)の一つではある。 ・カール・ライスター ウィーンフィルのメンバーと組んだLP。よく聴くと、木に竹を接いだようなアンサンブル。「木」がライスターで、「竹」がウィーンの弦だ。独特の品格と軽やかさを持つウィーンの弦に対して、ライスターのぶっきら棒なスタイルが、気になり出すと、とっても気になる一枚。喩えを変えると、サラサラと流れる小川に、トコロテンが(真珠のように透明ではあるが)グニューと押し出されているような演奏なのだ。 ・アルフレート・プリンツ それではと、弦もクラもウィーンの一枚を聴いてみると、そんな違和感は、やはりない。 しかし、日本のクラ奏者の誰もが憧れるプリンツの音は、ライスターの直後に聴くと、さすがにイモっぽく聞こえるのが面白い。演奏はきわめてオーソドックスで、神棚に奉るほどではないのだが、第1楽章の第2主題(チェロのピッチカートと弦のシンコペーションのリズム)でややテンポを落とし、第1主題とは微妙に趣を変えて歌うところが泣かせる。この部分の和声の変化を美しいと思わせるのは、プリンツが一番だ。 ちなみに、第3楽章のトリオで彼はテンポをがらりと変えて遅く演奏するが、これはピリオド・スタイルに通じる。 ・レオポルド・ウラッハ それではと、プリンツよりも前のウィーンの大御所、ウラッハの第3楽章トリオをチェックしてみたら、何と彼はプリンツよりもさらに遅くテンポを変えて演奏していた! なるほど「伝統」だったのね。プリンツは70年代末、ウラッハはそれより20年前の演奏。聴き直してみると、二人の演奏は、テンポといい、上記第2主題の歌い方といい、思ったよりもすごく似ていてビックリ! プリンツがそれだけ「古い」ということか? ・ヴェンツェル・フックス それでは、と現代のオーストリアの組み合わせ。ヴェンツェル・フックスとザルツブルクの弦。フックスはベルリンフィル首席だが、ウィーンで勉強したオーストリア人。両者のスタイルは、やはり上記のウィーン風である。ただし弦の実力がやや弱く、フックスの演奏もこなれてはいない(ライブ録音)。 ・カール=ハインツ・シュテフェンス ならばと、もう一人のベルリンフィル首席でドイツ人のシュテフェンスと、ドイツ人(が多い)の弦。まず弦がはっきりウィーン風とは異なり、音の語尾をあまり減衰させず、フレーズ感も長い(要するにトコロテン方式)。シュテフェンスも以下同文。 ・ジャン=ルイ・サジョ じゃあと、今度はフランスのサジョと、フランス人(が多い)の弦。出だしからもう、ウィーンともドイツとも全く異なる「おフランス」の流れるような演奏。音のアタックはきつくなく、イ音(非和声音)の強調などもなく、ウィーン風の音の語尾の減衰もあまりない。いささか平面的ながら、しかし情動は細やかといった演奏。 ・その他 印象に残る演奏は、米国のジョン・マナシー(上海カルテット)。音の均質性、鳴りの良さはピカ一で、情感にも富んでいる。 フレージングが最も僕の好みに合うのは、ピリオドのバセットクラで演奏したヴォルフガンク・マイヤー(モザイクカルテット)。他のほとんどの演奏が、弦の冒頭を4小節フレーズで流して演奏するのに対し、マイヤー盤の弦は2小節単位で、イ音やアーティキュレーションを強調する演奏。ヴィブラートなしのハーモニーも美しい(もっとも、最近のピリオド演奏では結構ヴィブラートをかけるようになって来たが……)。
by hornpipe
| 2006-12-29 00:05
| クラリネット
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