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●第1楽章
この作品には、モットーとも言うべき二つのモチーフが最初に登場する。 一つは、最初の2小節の螺旋状の動き……モチーフA。 もう一つは、後の2小節の半音程の動き……モチーフB。 ロ短調でありながら、冒頭2小節はニ長調ともつかない曖昧さを持っている。 続いてクラリネットが分散和音で登場するが、これもニ長調で始まり、魅力的な和声展開をしてロ短調に終止する。下の譜例2小節目からのクラリネットのクレッシェンドは、チェロの声部を聴き、和声を感じながら膨らませると効果的。 この分散和音の出だしは、モーツアルトの5重奏曲を意識したと見る人もいる。 クラリネットの旋律はモチーフAに移り、最高音Bまで駆け上がるが、興味深いことに最初の草稿(自筆譜)では次のように下降フレーズになっている(上の譜例につづく)。 まるで、きりもみしながら墜落してしまうような印象だ。 クラリネットの後にチェロとヴィオラでモチーフBが歌われる。つまり、この部分は冒頭4小節を拡大したもので、そのまま次の譜例になだれ込む。 テュッティで決然としたリズムを刻む。 この跳ねるようなリズムと、2小節目以降の音の動きは、モチーフAから来ると思われる。この音型は展開部で多く現われる(展開部で第2主題は登場しない)。 つづいて第2主題が登場するが(譜例では前の小節の8分音符のアウフタクトが抜けている)、上の譜例の2小節目以降の反行形的な音型で出来ている。特に1小節目の最後の音がタイで次の小節につながる点も酷似。 ●第2楽章 Adagio。弦楽器は弱音器付きで奏でる。 ミュートは古来、葬送の音楽に使われて来たが、ロマン派以降は夜をイメージさせる場面に多く使われる。私見では、この楽章にはミュート以外に「夜」(あるいは田園の夕暮れ)を連想させるほかのテクニックが使われている。 その一つは、クラリネット・ソロに遅れて追いかける第1ヴァイオリンの最初の減6度の音。 もう一つは、17小節目から明瞭に聞こえて来るヴィオラの3連符の(タイでつながった)刻み。これは恐らく、夕暮れに遠くで啼く鳥(ツツドリ?)の声を模している(そんなこと誰も言ってはいないのだけど)。 冒頭のメロディが、3度と4度を中心に作られていることに注意(ブラームスのクラ作品のモットーとも言える)。 中間部、Piu Lentoに入る前の経過部にモチーフAが現われる。 この曲で最も印象に残る中間部は、ロマ(ジプシー)の音楽をブラームスが実際に耳にして着想を得たといわれるが、音程の骨格は第2楽章の冒頭と同じ3度→2度(2小節にわたる点も同じ)。これをクラリネットはモチーフAで装飾していると考えられる。 さらに第3小節からは4度上昇→下降という点も同じ。次の二つの譜例は続けて見る。 この音型はクラリネットトリオやソナタ第1番のモットーである「マタイ動機」そのものだ! クラリネット奏者にとって面白いエピソードを一つ。 中間部の85小節目からの難しいアルペッジョには誰でも苦労させられるが、ミュールフェルトはここでA管ではなく、演奏がより簡単になるBb管に持ち替えて吹いたという証言が残っている。Bb管に替えるチャンスは81小節の1小節間しかない(80小節目にBb管では出ない最低音Ebが出て来るので)。このため、楽器の持ち替えを容易にするため、数小節のつなぎを付け加えた(中間部から再現部への経過部にも!)版があるというが、未見。 第2楽章のコーダは、中間部を回想する極めて美しい箇所。 ●第3楽章 ブラームス特有のAndantinoのゆったりしたメロディで始まる。 これも良く見ると、マタイ動機がフレーズの骨格になっているように思われる。 続いて出て来るフレーズは…… これは第1楽章の第2主題に現われるフレーズである(下段の第2ヴァイオリンの途中からのフレーズ)。 しかも、このフレーズは続くPrestoの主要モチーフとなる。次の譜例の第2ヴァイオリンに注目。 ●第4楽章 変奏曲形式。この点も終楽章に同じ形式を持つモーツアルトの5重奏曲を模しているとされる。 冒頭のテーマはモチーフBからなり、ここへ来てしっかりとこの曲のモットーを再現する。 以下、モチーフAとモチーフBを駆使したこの楽章は、「隠し絵」(だまし絵?)発見の面白みよりもブラームスお得意の変奏技術の方が勝っていると思われ、その分析は私の能力を超える。 最後に、どなたもご存知、この曲の冒頭シーンが最後に回想される部分のみ掲載しておく。 一応、禁無断転載です。 フーッ! 結構疲れました(笑)。
by hornpipe
| 2006-04-29 23:32
| ブラームスのクラリネット作品
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