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ベートーヴェンの伝記に登場するおなじみのパトロンたち……、ルドルフ大公、ロプコヴィツ、ラズモフスキー、リヒノウスキー、ヴァルトシュタイン……etc。
今までの私の漠然とした知識では、こうした貴族たちは、ナポレオンのウィーン侵入と占領を境にしだいに力を失い、ベートーヴェンは彼らの後ろ盾を失っていったのだと思っていた。 あるいは、 ベートーヴェンは、新しく台頭した市民階級のために作曲し、芸術家として自立した最初の作曲家であり、宮廷や貴族たちに対しては冷淡な態度をとっていた……と思っていた。 この本を読むと、きっと私だけではないと思われる音楽史のこんな常識が、かなりの部分修正を迫られることになる。たとえばこんな具合に。 ・ベートーヴェンを支えた貴族たちは体制改革派で、むしろ親ナポレオン派としてナポレオンの台頭とともに勢力を拡大した。 ・ベートーヴェンも親ナポレオン派だった可能性が高く、「英雄」の献呈の辞を抹消したのはベートーヴェン自身ではなく、彼の死後に、復古した体制側(メッテルニッヒ?)の仕業だった可能性もある。 ・ナポレオンが1812年にロシア遠征に失敗して以降、ウィーンではメッテルニッヒを中心とした守旧派が復活し、ウィーンで孤立した改革派のベートーヴェンは経済的に窮地に陥っていく。 当時のオーストリアやドイツは、さしずめ日本の幕末に似た状況で、体制改革を図る貴族や知識人、芸術家たちと、封建的な領主を中心とした守旧派とが生々しい闘争を繰り広げていた。 そんな中でベートーヴェンが、こうした改革派の人たちといかに接触し連絡を取り合っていたのか、が本書の骨子である。 ベートーヴェンの手紙には様々な隠語や符牒が隠されていたそうで、音楽学者たちが様々に解明を試みた「永遠の恋人」への手紙を、筆者は上記改革派への「密書」だったと解く。本書のタイトルからも、最初はキワモノの類かと思って読んでいったが、最後は「!」マークをいっぱいつけて読み終わった。 未だに誰のために書かれたのか解明されていない「エリーゼのために」が、ラテン語の「エリジウム=解放の女神がいる天界」(シャンゼリゼなどの語源)から来ており、第9の歌詞にも出て来るなど、目からウロコの話がたくさん出て来る。
by hornpipe
| 2013-06-06 22:51
| 音楽一般
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