カテゴリ
最新の記事
以前の記事
フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
晩年の武満徹の写真を見ると、なぜか亡くなった私の祖母を思い出してしまう。晩年になるほど氏は「おばさん顔」になっていったけれど、それ以上に、私の祖母も、あのように他人を容易に入り込ませない厳しくも冷たい表情をすることがあった。
武満氏は人見知りがひどかったという。それでも、一度打ち解けてしまえば「あんなに楽しい人はいない」と友人たちは語る。 一方で、盟友だった岩城宏之などは「ずうっと怖かった」と語っている。まあ、大抵の人は、あの顔と表情を前にしたら緊張してしまうのではないだろうか。 武満氏とはちょっとだけ言葉を交わしたことがあった。今から何年前だろう? 渋谷のパルコ劇場で「ミュージック・トゥデイ」を主宰されていた時だったと思う。 アメリカからアンサンブル・タッシが来日し、聴きに行った。休憩になってロビーに出たら、そこに武満さんが座っていた。その隣りに知り合いの演奏家がいたので話していたら、武満さんが横から、 「マイケル・レアードならよく知ってるよ。彼は~~(残念ながら、そのあとどんな話だったか覚えていない)」 私が編集している雑誌をご存知だったので感激しながら拝聴し、せっかくの氏のコメントを生かしたいと思って、 「いまのお話し、雑誌に載せてもいいですか?」 と聞いたら、一瞬にして氏の表情が変わった。あ、まずかったのかな?と思ったが、その後はとりつくしまもない感じになってしまった。 あのときは、武満さんの方から声をかけてくれた。その調子に合わせてこちらも「雑談」すれば良かったのだ。きっといろんな内輪話をしてくれたに違いない。なのに、私はあそこで自分から「仕事モード」に切り替えてしまった。氏の雑談をこちらから拒否してしまったようなものである。 いずれにしろ、人懐っこさと、人を寄せ付けない厳しさ、氏の両面を図らずも私はこの目で見てしまったのだった。 武満氏は多くの文章を書き、社会的な問題にもコミットし続け、音楽的な組織の運営にも積極的にかかわった。あれほど「発信力」のある人だったにもかかわらず、おそらくはマスコミやジャーナリズムを筆頭とする多くの無理解にも悩まされたに違いない。晩年の氏のあの厳しい表情は、そうした世間の「無理解」から作られたもののようにも思える。
by hornpipe
| 2012-04-26 23:02
| 音楽一般
|
ファン申請 |
||