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パリ管弦楽団で来日中のパスカル・モラゲス氏にお会いした。14歳でパリ音楽院に入り、18歳でパリ管のスーパーソロイストになった氏も、オーケストラでは今や在籍30年の古参メンバー。パリ音楽院教授としての指導歴も長い。
話のなかで一番面白かったのが、氏はパリ音楽院に入る前からカール・ライスターに憧れ、ドイツやウィーンの音をイメージしていたということ。バレンボイムの推薦により、エキストラでベルリンフィルの中でトップを吹いた経験は、氏のこれまでの音楽生活の中でも特別な体験だったそうだ。 ドイツの音を目指して自分の音を磨いたというフランスのクラリネッティストは、実はモラゲス氏に限らない。それどころか、今まで話を聞いたフランスのクラリネット吹きの多くから、私は同じ言葉を聞いた。かのミシェル・アリニョン然り、クロード・フォーコンプレ、ミシェル・ベルテリ、ジャン=ルイ・サジョ、そして間接的にだが、ギイ・ドゥプリュ御大からも。 さらに意外なのは、彼らの何を憚るでもないその語り口である。世界に冠たる自国フランスの伝統に対して、こと音に関しては遠慮も会釈もなく、躊躇なしにドイツの音を良しとする人が多いのである(フランスのエコールの牙城ともいうべきパリ音楽院教授の口からですよ!)。 聞きながら「これはドイツの音がどうというより、自国の伝統に対する反発の方が強いのではないか?」と怪しんだりした。 そこで浮かぶのが、「心は左、財布は右」というフランスの諺。いつの時代でも権力には反抗心を持ち、でもお金に関しては現実的というような意味だが、フランスのクラリネット吹きの音にも同じことが言えるとしたら、結構よく出来た話になる。 この場合、「財布」にあたるものは何かといえば、モラゲス氏が付け加えた次のことばが当てはまるかも知れない。 「ドイツやウィーンの音には憧れますが、演奏スタイルやフレーズの作り方は私のものとは全く別物です」
by hornpipe
| 2011-12-03 12:13
| クラリネット
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