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大学1年のときの6月、実家のある山形から東京に戻る列車で、30代の女性と席が隣り合った。
列車が宇都宮を過ぎた頃、女性が私に話しかけて来た。「どこから来たの?」とか「大学生?」とか、そんなことだったろうと思う。 方言を覚られるのが嫌で、緊張しながら最小限の受け答えをしつつ、内心では次の質問に期待もしていると、女性は自分の話をし出した。 渋谷に住んでいるということ、田舎の母が具合が悪くて見舞いに行った帰りだということ、そして、問わず語りに「一人暮らしなの」とも……(来たッ!?)。 どう答えていいか分からずに「そうですか」とだけ返事をして窓の外を眺めると、車窓一面に黄金色の麦畑が広がっていた。 女性も私の視線につられて窓の方を向き、小さな声を上げた。 「あら、もう稲があんなに黄色くなってるわ。ねぇ?」 ……もしあのとき「麦が」と言ってくれていれば、別れ際に「まだ時間があるけど、お茶でも飲まない?」という彼女の言葉に負けていたかも知れない。 上は、自宅近くの荒川で撮った昨日の風景。これからさらに黄金色が増し、刈り取りを迎える。 麦秋は初夏の季語にもなっているそうだが、中国の言葉にもあるのかと思い、ネットで調べてみたら清の張問陶という人が「端陽相州道中」という漢詩に詠んでいた。 杏子桜桃次第円 きょうし おうとう 次第にまどかなり 炎涼無定麦秋天 炎涼定まること無し 麦秋の天 (以下、略) 暑い日と涼しい日が定まらない、というのは正にこの時期にぴったり。 追記:たまたま図書館から借りていた漢詩の本に、陸遊の「麦秋」と題する七言律詩が載っていた。「雨霽郊原刈麦忙」とあり、詩の中に麦秋の語は出て来ない。
by hornpipe
| 2010-06-07 23:10
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