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最近のカール・ライスターのCDは比較的オンマイクで録られたようなものが多く、ヘッドホンで聴くとなお、美音で知られる彼のサウンドの真骨頂を聴きとることが出来るように思う。
その音は、一言で言うと「ストレスのない音」だ。 クラリネットのTさんはこれを、「痛くない音」と表現する。最近、この言葉の意味がよく分かるようになってきた。 一つの音がリリースされるとき、アーティキュレーションやダイナミックスは様々でも、鳴る音の質じたいは丸く柔らかくあることを理想としているのだろう。 これはとても難しい技術に違いない。 リリースされる音のかたちは、本来、前もってイメージされた音のかたちであるべきである。舌の使い方、息の量とその使い方が無意識に準備され、それに添って音は発音される。 ところが現実には、プロフェッショナルでも、厳密にイメージ通りにいくことは稀なのではないだろうか。わずか舌の動きが強すぎたり、口が動いたり、息の出方が歪んだりと……。イメージと実際とを、それこそミクロの単位ぐらいまでにシンクロできるようにするために、プロでも日々練習を重ねるのだろう。 これは楽器にかかわらない。先日CDで聴いた日本人金管奏者のデュオは、上記が「出来ている人」と「出来ていない人」のデュオでもあった。一方はライスターにも通じるようなストレスのない音を出しており(改めて氏の実力の高さを知った!)、他方は「痛い音」を連発する。 ライスターの場合にさらに凄いのは、ストレス無くリリースされた一つの音が「棒吹き」にならないことだ。 と言うのはつまり、音のかたちが心地良いということ(彼はある意味、棒吹きの典型だけれど、これは大きな表現上の好みの問題)。そんな音は、古典的な曲にとてもしっくりとはまる。 Tさんのモーツアルト五重奏曲やコンチェルトの録音を聴いて「日本人離れしている!」と思ったのは、今にして思えば、正にこの「音のかたち」が日本人離れしている、ということだったのである。
by hornpipe
| 2010-03-19 22:59
| クラリネット
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