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西洋の音楽文化の深層にはユダヤ人とユダヤ音楽が深くからんでいる……漠然とした興味本位で、もしこんなことが書いてある本があれば是非読んでみたいと思っていた。そして偶然に見つけ、「あった、これだ!」と小躍りして読んだのがこの本。
「中東欧音楽の回路~ロマ・クレズマー・20世紀の前衛」 伊東信宏著・岩波書店 (2009年3月刊・2900円) 西洋音楽はこれまで汎ヨーロッパ的(普遍的)なクラシック音楽と、民族に固有の民俗音楽の二分法で研究が進められてきた。 しかし、さらにその下に、「もう一つの普遍的な音楽、諸民族の間にあってそれを繋いでいた音楽」があるのではないか、それがジプシー(ロマ)の音楽やクレズマーなどのユダヤ人たちの大衆音楽などではないか……というのが本書の視点である。 ハンガリーやルーマニアを中心とする東欧の民衆音楽を、フィールドワークも使っていろいろ考察する。 ジプシーやユダヤ人(に限らないのだが)たちの音楽は、民謡などの歌を伴う音楽よりも、いわゆるインスト(器楽)音楽(ヴァイオリン、クラリネット、バグパイプ、あるいは東欧のブラスバンド)であることが多く、そうした音楽はこれまであまり研究されていない、と著者は言う。 コダーイやバルトークなどが行った民謡の収集と分析に典型的に見られるように、ローカルな地に足を踏み入れて、土着の農民たちに昔から伝わる歌を訪ね、母国の音楽の「原型」を析出するという従来の手法からは、上記のような「インスト」音楽がすっぽりと抜け落ちてしまっていた。しかしこうした音楽は、容易に他の音楽の影響を受けやすく、それだけに個別の地域を越えて自由に伝播していく力を持っており、これまで「原型」と考えられてきた民謡や農民たちの歌にまで影響を与えている可能性がある、という。 (以上は、私の頭でかなり乱暴にろ過してまとめたもの) さらに、ロマやクレズマーの音楽が、世界のポップスや大衆音楽にまで影響を与えている可能性がある、とも指摘する。残念ながら、この点はそれ以上深く考察されていないが、日本の歌謡曲にすらユダヤ音楽の影響を受けているものが少なくない、と示唆している点が面白い。 つまり、ロシア革命で白系ロシア人音楽家たち(ユダヤ人が多かった)が旧満州や中国に逃れ、多くの日本人音楽家(淡谷のり子、笠置シヅ子、服部良一などの名前をあげている)が彼らの影響を受け、一部の日本の歌謡曲がユダヤ音楽にそっくりなことなども指摘している。
by hornpipe
| 2009-07-11 22:32
| 音楽一般
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